認証保育所を活かしてほしい、それは働き方などの多様なニーズ受け入れと保育の質向上への保護者の願い。

動画が出ていましたので、そちらもよければご覧ください。


2問取り上げた、認証保育所を活かすべきという質問と保護者負担軽減のイコールフッティングについて、説明します。

保育サービスには認可保育所を筆頭に、認証保育を含む認可外保育や小規模保育、居宅訪問型保育、ベビーシッターなど様々な事業がありますが、主に保護者が児童を預ける希望はやはり集団保育を行う保育所、それも認可保育所に集まる傾向があります。


認可保育所に入るには、保護者と児童の住んでいる区市町村に申請し、「保育を必要とする要件」を満たすかどうかを点数で測られることで、最も保育を必要としていると思われる児童から入所が決まり、区市町村が入所通知を出します。

この上で重要となるのは、そのポイントをいかに多く数えられるか、という点です。このことがあるため、認可保育所に入るには保護者の働き方(フルタイム勤務か、パートタイムか自由業か、など)が大きく関わることとなり、激戦と言われる地域では両親ともにフルタイム勤務でも認可保育所には入れないということも少なくありません。

また、例えば区市町村境に住んでいる場合などに、例えば「品川区の住所だけれども、同じマンションの半分は目黒区で、最も近い保育所は目黒区管轄」という時には区市町村をまたいで申請を行うことができますが、これは申請方法やポイントの計算方法が自治体によって差があります。具体的には、自治体によってはっきりと「市民を優先としている」と明記しているところや、他の区市町村に住んでいる方からの申し込みの場合「すべてのポイントを足した点数から−6点」などのマイナスをつけるということを明記しているところもあります。つまり、区市町村をまたいで申し込むということは基本的に不利であり、受け入れてもらえる確率は高くありません。それでも、一定のニーズはあり、見事はじかれずに違う区市町村の認可保育所に預けることができた人は都内で2000人以上いるということがわかっています。


このような働き方でポイントの加点を争う認可保育所ではなかなか子供を預けられない、という保護者と児童の受け皿として東京都で大きく存在感を発揮してきたのが認証保育所です。認証保育所は0歳児保育必須、1日13時間保育を特徴とし、保護者と保育所との直接契約を行うということが認可保育所と大きく異なります。

東京都が国の保育行政ではおさめきれない東京都の多様な保育ニーズに対して石原都政時代に開始した独自の制度であり、それまで認可に入れなかったお子さんたちを預かる場所として認可外保育施設の質を向上させるという目的もあり、都として一定の基準をクリアすることで認証保育所として認めて支援することを開始しました。

直接契約という形態は、かつて国の規制改革会議で認可保育所が将来的に目指すべき形態としても提言されたもので、保育所を利用者が選択することができるというメリットと、選ばれるために保育所の中でも質の向上に向けた自由な競争や切磋琢磨が行われるということが挙げられていました。


私たちが調査を依頼している株式会社インサイトテックの行ったアンケートによると、待機児童の問題が今もなお深刻であると考える人の割合は回答者の7割で、実際に保育所を利用しているうち希望の保育所に入れることができていないという人も2割いる状況で、さらに保育についての多様なニーズがまだまだ存在していることが明らかになりました。


待機児童をゼロにする、という大きな目標に向けて行政も事業者も努力をするのは大変重要なことですが、一般的に公費負担が大変大きいとされている(公開されている区市町村のものを平均したところ、0歳児を1人預かると40万円の運営費用がかかり、無償化に伴いこれに対する利用者負担は実質ゼロということになりますので、この運営費用負担はすべて公費、つまり税金からということになります)認可保育所のみを増設していく流れが生まれ始めていることには懸念を感じざるを得ません。

実際、私の地元市でも昨年までは市長が「認可保育所はこれ以上作らない」と公言されていたのが、今年度に入って来年度、再来年度に認可保育所を新設する計画であることを公表しています。

多摩市・稲城市ともに、待機児童は確かに新新定義でも77人・14人と出ていますので、新たに保育所を、ということも妥当に見えます。ですが、実際には待機児童は0歳ー2歳に集中しており、多摩市では3−5歳を中心に逆に「定員の空き」が生じており、その総数は68人となっています。

つまり、待機児童問題には、それぞれの区市町村の中で地域格差・年齢格差が生じています。

 

この先、女性の就業率はまださらに上がると予測されていますが、出生率の大幅な回復が見込まれていない状況で人口減(子どもの数の減少)と保育需要の増加のクロスオーバーがやってくると言われています。そうなった時に、おいそれと認可保育所をなくすわけにも行きません。都は緊急1歳児受け入れ事業もスタートさせていますが、このような事業に加え、今ある認可保育所の中でお子さんたちを地域の中でバランスよく預かっていけるような送迎ステーションの整備や、多様な保育ニーズに応えてきた東京都認証保育所を活かすことで、待機児童の解消と保護者・児童の満足感・幸福感を向上させることを目指していくべきであると考えます。


私の子供2人は私の働き方のせいか、認可には入れずに家族で転居もしながら無認可、小規模、認証、預かり保育ありの幼稚園などを経験し、そしてこの春には下の娘は初めて認定子ども園に入りました。どの保育施設もそれぞれに良さがあり、保育士の皆さんにも大変お世話になってきて感謝の想いしかありません。一方で、それぞれの施設に通うお母さんお父さんたちの生の声を聞きながら、どうしてもっと育児に時間をかけていたかったのに4月入所を目指して自分はフルタイムで復帰しなければいけなかったのか、けれどこのタイミングで復帰しなければ保育園に入れなかったし職を失うところだったから、という声や、復帰をしても本当は時短やフレックス勤務でご主人と勤務日をずらしながら子どもの成長を見ていてやりたかった、という声も少なくありません。毎日18時に退社して迎えに行き、帰宅は19時過ぎでそこから子供のご飯とお風呂に寝かしつけ、というフルタイム勤務の共働き、実家は遠方、というスタイルが、どれほどお母さんお父さんにとって大変な毎日を送らせているのか、というそもそもの日本の働き方・子どもとの過ごし方も考えなくてはなりません。


答弁で頂いた部分だけではまだまだ、認可外保育施設利用支援事業でも区市町村により額のばらつきなどがあります。


引き続き、待機児童ゼロに加え、保護者と児童が幸せに毎日を過ごすことができるように、できる限りの活動をしていきたいと思います。

斉藤れいな(さいとうれいな)公式サイト

前東京都議会議員 斉藤れいなの公式ホームページです。