人の移動と新しいまちづくりについて考える

釜石2日目は、近代製鉄発祥160周年の式典に出席しました。


ちなみに、この釜石市民ホールがイオンの横のだだっ広く何もなかった場所にどどんと出来上がっておりました。立派な建物です。

式典の前半の記念対談。

内閣官房参与の加藤さん、国連人口基金東京事務所長の佐藤さん、元釜石製鐵所長の猪瀬さんと野田市長。

釜石との関係から、地方創生のまちづくりについてなどたくさん面白い話が聞けました。

秋田出身の佐藤さんの言葉で印象的だったのは、これからは釜石は鉄と魚とラグビーのまち、から、マグネットと魚とラグビーのまち、になるのはいかがでしょう。という部分です。


マグネットはつまり、磁石、引きつける力を指します。

住民力を高めなければ、まちに人が帰ってこない。

釜石市は製鉄業の栄えていた全盛期は82000人の市民がいましたが、今は35000人ほど。人口動向調査では人口動向調査では2040年に今の人口がさらに21000人になり、高齢化率(65歳以上の老年人口の割合)も44%にまで上がると予測されています。残る人口の二人に一人近くが、高齢者となるわけです。

ところで地元の多摩市は平成29年度現在で人口は148293人、高齢化率は27%ですが、国立社会保障・人口問題研究所(2013年3月推計)の将来人口推計によると2040年には人口は127469人、高齢化率は38%に達するという見込みが出ているので、母数は違えども生産人口減少や医療・介護費負担増大という共通の課題を抱えていくということがわかります。


佐藤さんがおっしゃっていたのは、この時に釜石に力があると感じるポイントは、外部のものを受け入れる柔軟性があるところであるということでした。違うものや新しいもの、遠くのものや知らなかったものも受け入れて、釜石なりに解釈や咀嚼をしてものづくりへと転化していく包容力や柔軟性が釜石の市民のDNAにはある。市民が誇りに思っているところをさらに強化しつつ、発信していく。そのための戦略を立てなければならない、いつ、誰が何を誰にどうやって発信するのかを明確にしていくべきであり、例えばこれからラグビーオリンピックで世界から人がくる釜石の街に、イスラム教のハラル(宗教上の教えにより許された項目、という意味です)に即したメニューを提供する街はあるか。これはなかなかに的を得た指摘ですが、世界を飛び回って国連組織で働いてこられた佐藤さんだからこその視点であるなと思いました。


まちづくりはハードだけではいけない。心のインフラ、住民力のインフラを整えて、誰も取り残さない意識を持つことが大切である。そして、そのためには、大きな何かが必要というよりも、小さな工夫や努力を積み重ねる方が力を発揮することになるんです。そのようなお話の内容でしたが、とても納得させられました。


そして元釜石製鐵の猪瀬さんからは、釜石のラグビー人口増加への取り組みについて。子どもラグビー教室はもちろんのこと、指導者の育成、OBの活躍の場作り、ラグビータウンを作ろうということで合宿所などの企画。

そういったお話に加えて、国の補助金制度でまだまだ活用されていないものが多く、もっと活用すべきだという提言がありました。

「10万時間の法則って知ってます?知りませんよね、僕がいつも考えてるだけだから」というセリフで会場に笑いが起こりました。

10万時間、何かを必死にやり続けて成し遂げるのに必要であると考えている時間だそうです。年にすると30年。例えば20歳の青年が必死に毎日やり遂げるために10万時間費やして50歳になる頃にようやく形になってくる。けれども、それを10人でやってみたらどうか。3年でできるんです。と、いうことで、何かを成そうと強い思いを持って取り組む時に、一緒に取り組む仲間を見つけるのも非常に重要なことですよ。という得難いお話でした。


これまでの人口動態とは大きく変わってくる時代だからこそ、新しい建物や施設建設には非常に慎重にならなければいけないと私は思います。特にそれが、市民や都民・国民からの税金で運営していくものであるならば。改修費用や時期、そして役目を終えて解体されるであろうまでの運営年数やライフサイクルコストを精査して提示するのは提案時に公表するくらいでないと、無責任なのではないかと感じてしまいます。


私は今回釜石公務のため平昌視察には行っておりませんが、平昌五輪が始まって、都議も視察に行っています。東京2020大会に向けては、できる限り「負の遺産」ではなく「正のレガシー」を残せるよう、人に知識や能力を与えて活躍できる道筋を示してくれるような大会にするべきだと考えています。

これについては、実は私が担当させていただいて、代表質問用に項目を作成中です。生活文化局の新規事業で、「都民の活動を支援する体制作り」というものがあります。まだ検討予算のみの段階ですが、東京大会(ラグビーもそうですね)をただのスポーツの大会としての成功だけではなく、それに関わりボランティア活動などを通して地域の中で共助の体制を取ることに大きく貢献してくださる人材は必ずや大会後にも活躍して行っていただけるように、ということを見据えて始まる重要な新規事業です。


人に投資して、人を活かしていく施策への転換が、東京都では始まっています。予算案にはいくつもそういった点がありますので、そちらもまた皆様にお伝えさせていただきたいと思います。

斉藤れいな(さいとうれいな)公式サイト

前東京都議会議員 斉藤れいなの公式ホームページです。