新宿児相を視察。児童保護と集団管理の両立の難しさ
本日、都内でも最も管轄が広く、担当児童人口も多い新宿にある児童相談センターに視察に伺いました。都内11ある児相の中で最大、また他の児相の約3倍の児童人口を担当しています。新宿児相が担当する児童総人口は都内9区と島嶼部で、約30万人です。職員の方は常勤と非常勤合わせて約300名。児童相談センターと違うフロアには教育相談センターや警視庁新宿少年センターなども入っているため、虐待やネグレクト、いじめ、いじめ、不登校、非行や犯罪など様々な問題を複合的に児童が抱えている場合も各所が連携して対応に取り組めるということです。
東京都の一時保護所には年間述べ2000名ほどの児童が入所します。一日に新規で6~7名ほどということです。その入所の理由はおよそ、虐待が1205:非行が619、養護その他が313となっています。虐待を受けてここに来られる児童の虐待の種類も様々で、身体的虐待のみならず、心理的虐待やネグレクト、性的虐待と、それぞれの児童が体験して来た状況は様々です。
入所の定員を今現在もややオーバーしながら児童の受け入れを行なっている一時保護所にとって、難しいのは児童保護と管理体制構築の両立です。
例えば、一時保護所には、三大ルールというものがあるそうです。
①無断外出はしてはいけない(事故防止などの児童の安全のため)
②男女の交流はしてはいけない(性的虐待等の被害者もおり、また一方で非行により入所した児童もおり、児童の保護のため)
③プライベートの話をしてはいけない(中には身元や地元特定をしたのち、退所後につるんだり悪友となってしまうようなことを防ぐため)
この3つのルールの他にも、例えば「へそピアスなどは入所中ははずしておくこと」「タトゥーなどは隠しておくこと」これはわかるのですが、さらに、「髪の毛は黒く染めなおすこと」「食事中など、他の児童に目配せをしないこと」などの細かなルールがあることに驚きました。児童同士のいじめやトラブルを防ぐため、という目的があるということでしたが、児童本人たちからしてみれば中には「自らがなんら悪いことをしたわけでもないのに、ここに入所させられた」上に、プライベートの会話を禁じられ、食事中に人と目を合わせることを禁じられるというのは、なかなかに難しい状況なのではないかと思いました。
新宿児相には精神科医や心理職の専門家もおり、治療指導課という都内でも珍しい特別な音楽・造形などを活用した治療指導プログラムを実施しているフロアもあり、職員の工夫や熱意も伝わってくる内容でした。
社会的な活動の経験が少ない児童さんたちのために、休日には納涼祭やクリスマス会など、季節の催しを行い、サンタの姿に扮した職員からプレゼントを受け取ると、「生まれて初めてクリスマスプレゼントをもらった、嬉しかった」という児童さんもいたようです。
児童相談所というところが受け持つ、「育児に関する相談対応」と「虐待対応」が全く趣の異なる業務であり、できれば機能分化することが望ましいと最近では有識者や児童養護関係者からも声が上がっています。
「相談対応」は親との関係構築を目指すものであり、「虐待対応」はあくまでも児童保護のため、時には実の親から子供を引き離さねばならないという相反する業務を行うことになるからです。
これと似た理由で、一時保護所は「非行児童保護」と「被虐待児童保護」のあり方を分化させるべきではないだろうか、というように感じられました。乳児院などで聞いて来たお話でも、虐待の中でネグレクトと身体的虐待では適切な接し方が全く正反対である、ということもあります。多様な環境においてそれぞれに様々な問題を抱えて来ざるを得なかった児童たちを、一律に一様に保護をする、というのは大変な困難を伴うのではないでしょうか。
圧倒的に専門職員の数や担い手の数は足りていない中で、児童養護の問題は待った無しで相談対応件数は毎年右肩上がり、昨年度は過去最高の14207件(東京都)を数えています。
あくまでも「一時的に保護をする」場所としてだとしても、子供たちの安全に加えて人権が守られるようなあり方を検討してゆくべきです。
ちなみに、一時保護所は平均保護日数は40日ほど、最長は120日ほど滞在する児童がいるということです。また、東京都のデータでは退所してからゆく先は家庭が最も多く726名ですが、児童福祉施設に入所する児童(207名)や他の児相へ移管される児童(256名)も多いです。里親委託はたった1名。
家庭への復帰がさらに推進されるように家族再統合のためのプログラム等を充実させてゆく必要があります。ここは都議会に戻り取り組みを調査してまいります。また、里親委託に向けた体制整備も急務です。
新宿児相は東京都児相のセンター的役割を担っているということで、今日も児童福祉司向けの研修講座が開講されていました。
業務をフルに回転させつつ、どんどんと高まるニーズに向けて人材育成も取り組まなければいけない。児童相談センターの担う役割は日々増していると感じています。
本日の視察について、最初にご提案くださったのは多摩市の遠藤市議でした。
遠藤市議、ありがとうございました。
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