都立病院の独立行政法人化の検討状況について伺いました

予算特別委員会の翌日、厚生委員会の病院経営本部質疑がありました。(本日は福祉保健局質疑でしたが、そちらはまた改めて別に報告します)


私からは、昨年1月に都立病院経営委員会から提言がなされ、今後、民間医療機関で対応困難な行政的医療を提供し続けるという都立病院の役割を果たしていくための経営のあり方について、メリットやデメリットの検証も含めた検討が行われている件について、最新状況を伺いました。


地方独立行政法人が運営する病院は平成30年3月時点で約90まで増えています。私も独立行政法人が運営する病院に勤める医師から話を伺い、独法化の経緯について聞いて参りましたが、主に医師等の人材不足に課題があり、医師がより柔軟な働き方で働いていただくことについて独法化が果たす影響は非常に大きいということです。


例えば子育て中の医師等にとって、働ける時間帯や曜日に限りもある中、勤務形態や兼業について規制のある現行制度だと、より働きやすい民間病院やクリニックへと人材が流出してしまう現状があるのが事実です。特に、現在非常に少ないと言われているのが麻酔医ですが、麻酔医は週3日同じ施設で勤務しないと専門性を保てない、けれども例えばこれが都立病院勤務とクリニック等のフリーランス型勤務では1ヶ月の給与が3倍前後の差があるとも言われています。そして都立病院では子供がいるからといって短時間勤務などの柔軟な働き方を取ることは難しく、子育て中の麻酔医でヒアリングした中にはやはり近々フリーランスでクリニック勤務にうつるという声がありました。

独法化の検討にあたって、重要なのはいかなる経営形態であっても本来の行政的医療の提供や災害時の受け入れ対応など、都の医療政策へ貢献していくことができるように東京都がしっかりと関わっていけるのか、また議会がチェックすることができるか、という点です。


これについては「法人が達成すべき中期目標を、知事が議会の議決を経て策定」「これに基づき、法人が中期計画を定め、議会の議決を経て知事が認可」「法人の業務実績は評価委員会の意見を聞いて知事が評価し、議会に報告」など、綿密に自治体とやりとりを続けていけることが確認されました。


人員確保について実際に独法移行した病院の事例では、職員の増員や救急搬送患者数の増加、癌治療体制の充実や循環器病センター充実に取り組んだ例が局側からあげられました。


子育て中の特に女性医師の働き方について、多様な働き方を実現することができるか、独法移行病院の事例を伺ったところ、


独法病院では独自に勤務形態や勤務条件を設定することが可能

神奈川県立病院機構や京都市立病院機構では育児に限らない短時間勤務制度の導入

神戸市民病院機構では大学院留学等に係る有給休職制度を整備

などの実例が紹介され、医療人材確保に向けた好事例として検討の材料とできると感じました。


平成31年度予算案では都立病院の経営力の向上と経営のあり方に関する検討経費が計上されています。この内容は、


経営のあり方の検討にあたり技術的・専門的な支援を受けることを目的とした調査委託費を計上している。課題の分析・検証を行うとともに、地方独立行政法人をはじめとした公立病院として想定される経営形態について、メリットデメリットの検証を行うなど、丁寧に検討していく、という答弁でした。


民間病院では、医療技術の高度化とともに医療サービスを支える様々な改善も進んでいて、ICTやAIを活用したサービス向上や働き方の改善など、働き方の改善など、企業と連携した共同開発に取り組んでいる病院の事例も見られるということで、こうした多様な事業主体との連携を迅速かつ柔軟に進めるという観点からも、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。