高尾山学園へ視察に。生徒に居場所と安心感を与え、自分のペースで学びを進められる不登校特例校のパイオニアです。
都内で初めての不登校特例校(現在は調布市のはしうち教室が分校として昨年から開校しているので、都内には2箇所ありますが、それぞれ市立なので市内在住の市民でないと通うことはできません)である八王子市の高尾山学園に視察に伺いました。
もともとは不登校について、以前福生市教育委員会へのヒアリングもご調整くださった多摩市の岩永市議からのお声がけで、東京都の特例校を視察して教育支援センター(適応指導教室)の取り組みなどについても現状を見てみましょう、ということで伺いました。東京みらいの都議も参加させていただき、驚きばかりの視察となりました。
高尾駅からバスに乗って、団地の中の停留所に止まるたびに地元の方々がおりていく、とてものどかな雰囲気の立地条件に恵まれた環境です。そしてこの団地にお住いのシニアの方々もこの高尾山学園や生徒さんにも関わりを持ってくださるように学校側がなるべく開かれた場所となるように工夫されているのが印象的でした。
岩永市議がすでに、大変わかりやすいブログを書かれていますのでそちらもご参照ください!
黒沢校長のお人柄、熱意、バイタリティ、と教員の皆さんの努力や能力(を磨く才能)などなど、様々な要因がありこの学校では地域の中では不登校とされた生徒さんたちに見事に安心感を持ってもらうこと、自己肯定感を持ってもらうこと、その上で自分のペースで学びを進めてもらうことなどに成功しているようでした。
不登校施策というと、少し前までは「不登校はいけないことだ、直さなければならない、在籍している学校にまた再び通えるようになんとかしよう」というような支援の形が主流であったような印象がありますが、東京都の不登校特例校は生徒さん一人一人が柔軟な授業形態の中、授業の時間数なども大幅に緩和しているけれども卒業すれば中学校卒業の認定がなされる、という「不登校となった理由や事情に寄り添いながら、緩やかに人との関わりや学習を進めていく新たな不登校支援」と言え、ただ一律に既存の在籍校に戻らないと!という方向性ではない選択肢を提示したという点で大変評価されるものです。
高尾山学園の場合は学校内に八王子市教育委員会の設置する適応指導教室(教育支援センター)も併存する、都内でも大変めずらしい(というか、ここだけであります)体制ですので、特例校の生徒さんに加え、未だ地域の在籍校に籍を置いたままこちらに通うということも可能です。
そもそも、八王子市では東京都平均や国平均に比べても、不登校生徒の割合が高いということもあり、当時の市長がそのニーズを感じて特例校の設置や適応指導教室の強化、また公立学校に通う生徒さんを支援できる体制の構築(月に三日休んだお子さんは全て見守れるように、教育支援センターで生徒さんの情報を一元管理)してきたということがあるようです。
高尾山学園も、東京都からの特別な予算などは一切ない中での、八王子市独自の予算で年間4800万円を捻出し運営されているということで、大変驚きました。東京都は特例校に対して、お金ではなく、授業時数やカリキュラムの要件緩和のみしか行なっていないということです。
高尾山学園の中にはいたるところに、生徒さんの「居場所」がありました。
教室の後ろにパーテーションで仕切られた小部屋ができていたり、上の写真のように部屋自体をプレイルームとして授業中も含めて開放していることで、生徒さんたちにとっては「いつでもそこに行っていい場所」があるという安心感につながるようです。一方、先生方にとっては「つまらない授業をしたら1人また1人と、授業から生徒さんがいなくなっていく」というとっても緊張感あふれる授業形態であるとも言えます。先生たちの日頃の努力がおしはかられます。
授業以外でも、様々な課外活動、また講座と呼ばれる体育や芸術やインターネットを使ったクラスも拝見しました。
タブレットや電子機器も、都からの支援は一切ないところを、黒沢校長を始め教員の皆さんが持てる人脈やアイデアを駆使して、なんとか様々な設備を(民間からの無償貸与などを受けて)まかなっておられるようでした。予算があっても目的意識がなければ、タブレットなども宝の持ち腐れとなることもあることを伺うことがありますが、この学校は目的意識によって先生やたくさんの大人たちが子供達の周りの環境を整えてきてくださっているのだということを感じました。
ほとんどの教室にあったのが、パズルです。
みんなでピースを埋めていく、その作業を通してコミュニケーションや自分自身の安定を確保できるようにしていることがわかります。写真のパズルは、真ん中だけ作ってあったのが印象的でした。
黒沢校長から大変に貴重なお話をたくさん伺った中で、不登校の生徒さんの支援に欠かせないのは「親への支援だ」という、以前葛飾のシューレ学園で学園長から伺ったことと全く同じお話がありました。
お子さんに距離が近すぎる、もしくは離れすぎている親御さんに対して、まずは毎日の過ごし方やお子さんとの関わり方なども、先生方が様々な行事などを通して一緒に併走しながら伝えていっておられるようでした。
また、最近は小学生中学生の生徒さんたちの中に様々な格差があるということも伺いました。
生徒さんのご家庭の経済的な格差は生徒さんご自身の体験格差となってしまうため、生徒さんの中には豆まきの時になんと言って豆をまくか知らないことがあったり、遠足で中華屋さんでお昼を食べようという時にメニューを見ても全くどれも初めて見るもので迷って悩んでしまう、ということもあったりします。
高尾山学園に、ぜひ公教育を担う様々な教員の方々が研修に訪れてほしいと切に思いました。
ここまでの体制はなかなか難しいにしても、きっと学ぶことがたくさんあるはずです。ただ予算やお金をつけるだけでは生徒には届かない。こちらの学校ではむしろ予算がない中でアイデアを出し合いタブレットなどは民間からの無償貸与で賄われています。
都内ではタブレットを全員配置しているところもあるけれど、与えることが目標になっているという指摘も聞くことがあります。
教育施策は目的ではなく、手段です。そこを間違えてしまっては形骸化した予算が垂れ流されてしまう。
生徒さんに、きちんと届いているか。それを知るには今回のように、現場に足を運ぶしかありません。
視察の始まりに、校長御自ら入り口でお待ちくださり、出迎えてくださり、本当にありがとうございました。昨年だけで23団体からの視察を受け入れたという高尾山学園を見本に、今様々な基礎自治体で不登校生徒の支援方策が検討されていると耳にします。東京都にできることを自分からも伺っていきたいと思います。
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