全国初!分教室型の不登校特例校、調布市のはしうち教室へ視察に行ってきました。

本日、東京みらいの3名で、調布市大町スポーツ施設内にある、「分教室型の不登校特例校」はしうち教室へ視察に行ってきました。


分教室型って、何?と思われた方に、簡単に言えば本校となる学校が別にあり、違う建物の一部を使用して設置する教室のことです。

ですが、私たちも今日、伺ってみるまでにうまくイメージができていませんでした。

同じ学校の敷地内の別施設を使っているのかな?と勝手に想像をしていましたが、実際には本校である調布市立第七中学校とは遠く離れています。


この、離れていると言うことがこちらの生徒さんたちにとっては重要なポイントだそうです。同じ敷地内では、どうしても抵抗感があったり、不安感が思い出されてしまったりもするもの。このはしうち教室はある意味分教室と言いながらも独立をした、とても落ち着いた環境に教室が設けられておりました。

元々は、調布市内の中学校に通う生徒さんが通級で通う「相談学級」がこのはしうち教室の前身であったようです。昭和61年に設置され、不登校のお子さんの学習支援や進路指導を行ってきた相談学級(適応指導教室、と一般的に呼ばれることもあります)がバージョンアップされる形で、昨年4月から分教室型の不登校特例校として生まれ変わりました。場所は同じでも、元々は「在籍校へ戻って通えるようになるように支援」していたことに対し、新たなはしうち教室は第七中学校への転校を前提として、授業時間や授業形態などが特別に配慮されて組み立てられているはしうち教室に通いながら、卒業やその後の進学などを目指して生徒さん自身の学びと成長を支援します。



生徒の数は今年4月に各学年6名で計18名だったのが、体験入学などの申し込みが相次ぎ、現在は24名まで増えているようです。各学年の生徒さんを分けずに、異学年教育を実践していると言うから驚きました。

また、人間関係が固定化しないように、特定の相手への苦手意識などが醸成されてしまわないように毎朝くじ引きをして、その日所属するグループを決めると言うことです。くじの結果により、生徒さんたちは2つのグループに分かれてその日1日の時間を過ごします。授業では、上の学年の生徒さんが下の学年の生徒さんに助言をするような場面もあるようです。まさか、イエナプランに似た形態の授業を行っているところに都内で出会えるとは思いませんでした。


高尾山学園と同じく、はしうち教室は公立学校の教員の先生方の大変良い研修の場となっているようです。まだ、不登校という状態にはなっていないものの、様々に不安や問題を抱える生徒さんたちに対してどう接していくことが良いのか、先生方の迷いや悩みを解決することにも一役かっていそうでした。


高尾山学園を視察した際には、規模や体制、予算も含め、これほどの対応策はすべての区市町村で実現することは難しいだろう、と思って少し難しい現実に直面したような気がしていました。

けれどもこのはしうち教室を見て、この分教室型であれば、多額の初期投資や維持運営費用もそこまで大きくならないということもあり、実現可能性が高いように思えて大変希望が見えるように感じられました。


設備投資などの初期費用の半額は東京都からの補助がおります。

また、現在配置されている正規職員4名と非常勤職員2名も東京都から派遣されているものです。元々はたった2名の職員で支援にあたっていたということですが、今はこの6名に加え市の嘱託員2名、講師3名、スクールカウンセラー1名という手厚い体制がとられていることから、そして詳しくは明日の教育委員会で公表されるそうですが、昨年度通われていた生徒さんの進学状況もとても良い結果に結びついていることがわかるということで、分教室型の不登校特例校は今後東京都内の各区市町村にぜひ設置に向けて検討を進めていただきたいと考えています。


生徒さんにとっては、これも一つの選択肢となります。

しかも、高い毎月の月謝や授業料を払う必要もない、公立の中学校のいち教室なのです。

どうしても在籍校には通えなかった、校門をくぐることができなくなってしまっていた、そんな生徒さんが様々な大人からのサポート、ケアによって、自信を取り戻し、自分なりにペースをつかんで中学校を卒業して次なる未来へと進む希望も持ってくれる。それは、生徒さん自身にとって、きっと後で思い返してみても「あの時、あの学校に出会えていなかったら、自分はどうなっていただろう」と考えてしまうような、劇的な出会いであるに違いありません。


すべての公立学校に通う生徒さんの支援へとつながる、教員の先生方への研修、また保護者の方々とのつながりを持つイベント開催など、様々な取り組みの拠点としても、大変有効であることがわかりました。そして、今現在のこちらの教室の先生方が、授業内容を毎日大変工夫され、ご苦労もある中で生徒さんたちからとても信頼されている様子も伺うことができました。

たまたま、視察中に卒業生の生徒さんが遊びに来られていました。今通っている学校が終わってから、こちらに足を向けて、あれこれと話をする。そんな場所になるということは、先生方がそれだけ生徒さんたちの心の拠り所になってきた証であると思われます。


都としても、ぜひこの取り組みが広がるように力強く支援してほしい。

生徒さんの状況はまちまちですし、すべての不登校の生徒さんがここにきた途端に人が変わったように変化する訳ではありませんが、忍耐強く、そして配慮深く生徒さんに関わる大人たちのこれまで培ってきたノウハウや経験は、きっと今後も多くの生徒さんの心に寄り添い、力づけてくれることだろうと思います。

こちらには毎週のように、都内のみならず都外からも視察団が訪れるということです。

はしうち教室の関係者の皆様、本日はありがとうございました。